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2、心の病? からだの病?

 クリスチャンであるHさんはある日、突然憂鬱な気分になり何をするにも億劫に思うようになりました。

通っている教会では常日頃活動的なHさんが落ち込んでいるのを見て、「何かショックなことがあったに違いない。とことん話を聞いてあげたり励ましてあげなければ」と言う人もいれば、「克服出来るように強い信仰が与えられるよう祈らなければ」という人もいる次第です。

しかし、そのような周りの声を耳にすればするほどHさんは落ち込んでゆくのでした。

何故なら、何もショックなことも無ければ信仰が弱くなるようなきっかけも見当らなかったからです。

 

実は人がうつ状態に陥るには大きく2種類あると言われています。

一つはそれこそ落ち込んでしまうような経験や体験をした時です。

多くの場合、何かを失う(健康、愛する者、社会的立場etc)経験をしています。

 

もう一つは脳内の問題やからだの病気の影響で鬱状態に陥ってしまう時です。

前者の場合は落ち込んで当然ですし、落ち込まないとしたらそのほうが問題かもしれません。

 

しかし、後者の場合は精神的に落ち込むような体験とは無関係になってしまいます。

ですから当然その対処も異なってきます。

前者の場合、失ってしまったことから来る悲しみや怒りを受け止めてくれるような安全な場が必要ですし、後者の場合は専門医による治療が必要になります。

 

これに対する周りの対処が異なるとうつ状態の本人はさらに苦しむことになります。

Hさんの場合は後者のからだからくるうつであったと考えられます。

さらに他のからだの病のように分かりやすい症状が出ていないので余計に悩んでしまうのです。

 

ですから「クリスチャンはいつも喜んで前向きに生きるべき」と言った構図で捉えていると無理が出てくる可能性があります。

何故なら、精神的にしろからだからにしても私達は誰でも人生の中でうつ状態になると言えるからです。

 

どちらにしても自分の状態を正しく理解し受け止めてくれる場があると大きな助けとなりますし、キリストからだなる教会とはそのような場であると思わされます。